小酒井不木全集
引用文献データベースについて

小酒井不木全集引用文献データベース(以下「本DB」)は、改造社出版の小酒井不木全集全17巻に記載された引用文献名、引用文章の記載箇所をデータベース化し、文献名の現代表記を行うとともに著者名や引用内容を明確にしたものです。また、小酒井不木文庫(小酒井不木の旧蔵書)との関係についても網羅するよう努めています。

全集に収集されている作品において、ほとんどの場合で引用文献リスト等はなく、旧字体表記や小酒井不木による独自の翻訳表記等によって、引用文献が不明瞭な場合がありました。本DBは、それらを明確にし、小酒井不木が各作品において、どのような文献を、どのように引用したかを把握できるようにすることを目的に作成を行っています。

小酒井不木の探偵小説,エッセイ等の作品には多くの科学的知識にもとづく記述がみられます。例えば,フィクション作品である探偵小説において,実在した科学者等が登場しており,探偵小説におけるリアリティの追求が伺えます。この科学的知識にもとづく記述は,科学論文における引用情報と類似するものであり,情報の根拠と作品への影響を表すものです。また,小酒井不木は結核患者としての側面を有しており,医学者でありながら患者として『闘病術』という作品を残しています。現在の「闘病」という言葉を世に広めるきっかけとなったと言われていますが,不治の病という科学の限界を痛感していた小酒井不木ならではの,患者としての「科学的知識への向き合い方」が現れていると考えられます。小酒井不木の知的活動を解明することは「科学的知識との向き合い方」に関する今日の社会的問題に対して、優秀な事例となりうるもので,小酒井不木の今日的意義は極めて大きいと考えています。

なお、全集において、引用文献を表記せず、著者名(人物名)のみを記載し引用しているケースも多くあります。本DBは、現在、引用文献が明瞭である場合を収録していますが、引用文献の表記のないケースは、今後の課題として、追加していくことを予定しています。また、全集の記載だけでは引用文献の特定に至らなかったものもあります。これも今後の課題として、追加していく所存です。

本DBは、日本科学協会の笹川科学研究助成による助成を受けたものです。

本DBの作成にあたって、引用情報の抽出や確認等、多くの方々に協力を頂きました。この場をかりて感謝を申し上げます。

(トップページ写真:書斎に於ける小酒井不木(大正十四年撮影)(『小酒井不木全集 第九巻』))


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